divire ― 線画にはどんな画像が使えるの? 対応しているファイル形式は?
サンプル画像を用いたチュートリアル記事(こちら)で、divire の機能についてざっと確認していただけたと思いますが、「はやく自分の線画で試したい!」という人が大方だと思いますので、この記事では、divire に塗り分け用の線画を指定するにあたっての注意点をいくつか解説します。
目次
「どのくらいの画像解像度(ピクセル数)まで対応しているの?」 → 4Kや8Kなど「常識的な画像解像度」なら、だいじょうぶ
divire の出力する、塗り分け&レイヤー化画像は、線画の元ファイルと「同一解像度」になりますが、あまり大きな線画を指定してしまうと、きちんと機能しないんじゃないかとご心配の方もいらっしゃることと思います。
結論としては、「2020 年現在の一般的用途に用いる画像の解像度なら、まあ問題ない」ということになります。
テレビの画像について、よく言及される「4K(3840 × 2160 = 約 800 万画素)」「8K(7680 × 4320 = 約 3300 万画素)」程度なら、divire はまず問題なく塗り分け&レイヤー化された PSD 形式画像を出力可能です。
また、まんがに詳しい方なら、モノクロ印刷用のまんが原稿データが、膨大な解像度を要求することをご存じかもしれません。
たとえば、CLIP STUDIO PAINT の、まんが原稿用の画像サイズプリセット「商業誌用 裁ち落とし 5 ㎜ モノクロ( 600 dpi )」では、B4 サイズ( 257 ㎜ × 364 ㎜ )を 600 dpi で出力するのに等しい画像解像度が必要です。
しかしそれでも、画素数としては 4961 × 7016 = 約 3500 万画素程度ですので、まんがのモノクロ原稿データであっても8K画像同様に対応可能だといえます。
もしかしたら、世の中には、研究用途などで、さらに大きな解像度を必要とする方もいらっしやるかもしれないので、さらに補足情報を。
divire 開発時、12800 × 12800 = 約 1 億 6400 万画素の画像が、私のテストした最大の大きさの画像になりますが、それでも PSD 形式のファイルを出力することができました。さすがにファイル出力が完了するまで多少もたつきましたが … 。この最大サイズであっても、現在市販されているノート PC の性能なら、20 秒程度以内にはファイル出力が完了するのではないか、と見込んでおります。
プログラムコード上、10 億画素程度以下ならば、原理的に処理に問題ないとは思いますが、divire にあまりに巨大な画像を指定した結果、 PC が故障したとしても、補償はいたしかねますので、ご注意を。(※ divire が「MIT ライセンス」のもと配布するソフトウェアであるためです。)
「白地に黒い線の絵じゃないとダメ?」 → カラーの線画もOK、ただし …
チュートリアル記事で扱った画像は、すべて「白地に黒い線」の画でしたが、色付きの線で描かれた線画を divire に指定しても、塗り分けファイルを出力することが可能です。
私はアニメにはそれほど詳しくないのですが … アニメの原画展の広告で見かけるような、色とりどりの線で複雑な指示が描き込まれているような(?)、なんかそんな感じの画像も、(たぶん)線画として使用可能です。
たとえば、以下はサンプル画像の九州の線画で、島嶼部の線をカラーに加工したものです。
(※ 参考画像ダウンロード: kyushu_colored.png )
これを、線の色がわかりやすいよう、divire を以下の淡い色の設定にして塗り分けてみます。
出力した JPEG 形式の塗り分けファイルでも、元線画の線の色が残っているのを確認できると思います。
しかし … よく見ると、種子島の部分が消えてしまっています。
divire は、指定された画像ファイルについて、プログラム内部的に、白地に黒の線が描かれた画像とみなしてから塗り分けの判定を開始します。
このとき、「ある一定値」以上の「濃い/暗い」色を、線の色と判定するため、上の線画の例では、種子島の部分を明るい黄色の線で描いてしまっていたため、線として捉えることができなかったのです。
種子島の部分をきちんと塗り分けるためには、設定入力エリアの
塗り分け処理方式設定ページで、“Threshold” の値を大きくし、画の線とみなす「線の濃さ」を薄めに調整してやる必要があります(詳しくはこちらの記事)。
また divire の上述の仕様のため、黒地に白い(またはより明るい色の)線で描かれた絵については塗り分け処理を行うことはできません。
したがって「黒地に白い線」の画を扱う場合には、お絵描きソフトの各種画像処理機能を使って、諧調を反転するなどして、「白地に黒い線」に近しい状態に加工してから、 divire に線画ファイルとして指定するようにしてください。
「線画に使えるファイル形式は?」 → 基本的に PNG・TIFF・JPEG 形式、多少の追加も可能
divire は初期状態で、PNG・TIFF・JPEG 形式ファイルの画像を線画として読み込むことができます。
さらに、設定ファイルを書き換えることによって、BMP ・ WebP ・ JPEG2000 形式の画像を利用することもできます(詳しくはこちらの記事)。
「透明のキャンバスに線だけ描いてある画像」もOK
お使いのお絵描きソフトによっては、透明なキャンバスに線だけを描くスタイルに慣れている方も多いと思います。このスタイルで作成した、「透過部分に線だけ描いてある」の PNG 形式や TIFF 形式画像も、線画ファイルとして divire で利用することができます。
ただし、透過つき TIFF 形式画像の線画については、現在、PSD 形式で塗り分けファイルを出力した場合に、 “Background” レイヤーに透過状態を保持したまま元線画を再現することができないので、その点につきましてはご理解ください。
「『ベタ(黒く塗りつぶされた部分)』のある線画はどうなるの?」
まんがの絵などで、黒い髪の毛だったり、穴の中の暗い部分を表現するために、線画と同じインクやスミの色で塗りつぶしてしまう、一般に「ベタ」という呼称で知られている手法があります。
このような「ベタ」のついている線画を、divire に指定した場合、どのように塗り分けされるのか疑問に思う方もおられるでしょう。
divire はベタを直観的に判断することができず、単に「(すごく太い)『線』」であるとみなします。
線画被覆オプションが OFF の場合は、ベタ部分は単純に塗り分け対象から除外されます。
線画被覆オプションを ON にした場合も、線画にベタがついていると、画像の全体を色で埋める(「線のない絵」にする)ことは難しくなります。
正直、divire で最初から「ベタ」のついている線画を扱うことは難しいです。
しかし、そもそも線画の作成時、お絵描きソフトを使ったデジタルのワークフローであるなら、「線で囲まれた部分を塗りつぶす」、いわゆる「バケツ」系のツールで「ベタ」を作ろうとするのではないでしょうか?
divire の機能は、「線で囲まれた部分を塗りつぶす」「バケツ」系ツールの機能を拡張したものとも言えるので、むしろ divire の塗り分けファイルを利用して「ベタ」部分を作った方が簡単であると私は考えます。
そのため、最初から「ベタ」のついた線画を divire に指定するのは、もしかしたら本末転倒になってしまうかもしれません。
まとめ
この記事では、divire に指定する線画ファイルについて、注意しておきたい点をいくつか解説しました。
チュートリアル記事(こちら)からのリンクで、この記事に先に目を通してしまった方は、以下が divire 解説本筋の次の記事になります。