divire の色塗り箇所(=レイヤー構成)の3つの区分をつくる ― “Periphery” と “Regions” と “Misc.”
目次
「どの部分を塗るか」 = 「どの部分をレイヤー化するか」 ― divire の機能の基本となるレイヤー構成設定ページ
メイン機能の紹介記事(こちら)でも触れましたが、divire の「レイヤー自動作成」機能で作られる「レイヤー」は、線画の線で囲まれた各箇所に「とりあえず」適当に色を塗って、その各色をレイヤー化したものです。1レイヤーには、それぞれ個別の1色が割り当てられます。そのため、「どの部分を塗るか」ということが、「どの部分をレイヤー化するか」ということとイコールになります。
divire の レイヤー構成設定ページは、線画の「どの部分を塗るか」ということを決める、ツールの基本部分になります。
この記事では、レイヤー構成設定ページのあつかい方について、詳しく紹介します。
“Periphery” と “Regions” と “Misc.” って、そもそも何?
塗り分け箇所の3区分
レイヤー構成設定ページには、任意の「色」を指定可能な窓が、“Periphery” の枠に1か所、 “Regions” の枠に2か所、 “Misc.” の枠に1か所設けられています。また、“Regions” の枠では、色の総数が、数値入力欄で指定された値になるよう、上下の2か所の色にはさまれた「間の色」が表示されます。
“Periphery” “Regions” “Misc.” の、3つの枠の中にある「色」の総数が、線画の塗り分け箇所の総数であり、自動作成されるレイヤーの総数にもなります(後述するように、一応 “Background” レイヤーというのもあるのですが … )。
“Periphery” “Regions” “Misc.” の区分けについて、おおまかに以下の表にまとめました。
Periphery | “periphery” は「周辺」や「外縁」という意味の英単語です。 画像の外側をとり巻いている部分(周辺部)に対して色を塗ります。 |
Regions | “regions” は「領域」を意味する英単語 “region” の複数形です。 条件(初期状態では「面積の大きさ」)に沿って、優先度の高い箇所から順に、指定された数だけ色を塗ります。 |
Misc. | “Misc.” は 「種々雑多なもの」「寄せ集め」という意味の英単語 “miscellaneous” の省略形です。 “Periphery” でも “Regions” でも色が塗られなかった箇所すべてに色を塗ります。 |
この区分けは、実際に色分けしてみた画像から、ヴィジュアル的に実感してもらうのがわかりやすいと思います。
divire の初期状態では、塗り分け設定は次のようになっています。
“Periphery” が「濃く暗いグレー」、
“Regions” が「ピンク」から「紫」を経て「水色」 (計 12 色)、
“Misc.” が「黄味がかった淡いグレー」、
といったところでしょうか?
この塗り分け設定のまま、犬張子の線画(↓)
を指定して塗り分けファイルを出力すると、次のようになります。
周辺部分が「濃く暗いグレー」に、面積の大きい 12 箇所が「ピンク」~「紫」~「水色」に、残りの部分全部が「黄味がかった淡いグレー」に塗り分けられていることを確認してください。
※ divire による塗り分けに向いている線画について
勘のいい方はもうお気づきかもしれませんが、divire が “Periphery” として、線画の「周辺部分」にだけ、わざわざ別の色を割り当てようとする仕組みになっているのは、設計思想として、基本的には「紙のまん中にキャラクターが描いてあるような絵」を塗り分けることを想定しているためです。
(学校の美術の授業で習う?)のどかな田園を描くような「風景画」、テーブルの上に果物が載っているような「静物画」は、divire による彩色の対象としては、あまり考えられていません。そもそも、アカデミックな美術のデッサンで、「ぬり絵」のようなすっきりした線を描くようなイメージがないですし … 。
線画によっては、指定した色すべてが使われないことも …
基本的に、指定した線画の塗り分け箇所が十分多ければ、divire のレイヤー構成設定ページに載っている色がすべて塗り分けに使われて、 PSD 画像形式を出力した際は、色と同じ数だけのレイヤーが作成されることになります。
しかし、線画によっては、ツール画面で指定した色が全部は使われない場合があります。
たとえば、もともと塗り分け箇所の少ない線画を指定した場合です。
下のあひるちゃんの線画(↓)は塗り分け箇所が 7 箇所しかないので、
上と同様 divire 初期状態の指定色で塗り分けを行うと …
このように、本来「ピンク」から「水色」まである “Regions” の 12 色がすべて使用されず、「紫」あたりで塗り終わってしまっています。“Misc.” に指定した、「黄味がかった淡いグレー」で塗られた箇所もありません。この設定のまま PSD 画像形式を出力した場合は、Region の 7 番 ~ 12 番や、“Misc.” に相当するレイヤーも作成されないことになります。
また、かなり特殊な状況ですが、 “Periphery” の色が塗られず、対応するレイヤーが作成されないこともあります。線画の「周辺部」として “Periphery” あつかいにする箇所は、画面の四隅のひとつ(初期状態では「左上」)を含むかどうかで判定しています。(詳しくは、こちらの記事。)そのため、画面の隅が黒く塗りつぶされているような絵を線画として指定すると、「周辺部」とみなす箇所を検出することができなくなってしまうので、“Periphery” の色分けは省略されます。
3区分の一部をチェック OFF にしたときの塗り分けの例
上に述べたように、divire によってどう色が塗り分けられるのかは、塗り分けの元線画にも依存する部分があり、さらに 塗り分け処理方式設定ページでの “Periphery” 除外指定の有無(詳しくはこちら)によっても変化があるので、なかなか単純にはわからないところがあるのですが … 。
レイヤー構成設定ページには、塗り分け区分ごとにチェック欄があり、これをチェック OFF にすると、特定の区分の塗り分け(=色付け =レイヤー作成)を省略することができます。
この組み合わせパターンだけでも結構あるのですが、とりあえず divire 初期状態で、すでに上で例に挙げた犬張子の線画を対象として、各区分チェックの ON / OFF を切り替えながら塗り分けファイルを出力すると、どうなるのか、以下表にまとめました。
(※ 表の画像では、どこに色がつけられているかわかりやすくするため、後述する “Background” の Blank モードを使用しています。)
Periphery | Regions | Misc. | 設定画面 | 塗り分けファイル出力例 |
---|---|---|---|---|
✔ | ✔ | ✔ | ||
✔ | ✔ | |||
✔ | ✔ | |||
✔ | ||||
✔ | ✔ | |||
✔ | ||||
✔ | ||||
さすがに “Regions” のチェックは ON にしておかないと、divire を使用して塗り分け作業をするアドバンテージがほとんどなくなってしまうのですが … 。
“Periphery” と “Misc.” については、ご自身のイラスト制作スタイルに応じて、チェックの ON / OFF を工夫する余地があると思いますので、扱いやすいパターンを探してみてください。
“Background” レイヤーはオマケみたいなもの
レイヤー構成設定ページには、塗り分けの「色」を指定する “Periphery” “Regions” “Misc.” の他に、“Background” という区分があります。
“Background” にもチェックの ON / OFF が指定可能で、さらに Source Image モードと Blank モードの2つを選択可能となっています。
PSD 画像形式で塗り分けファイルを出力した際は、色のついた “Periphery” “Regions” “Misc.” の各レイヤーの他に、さらに “Background” レイヤーも作成されることになります。
“Background” レイヤーに描画される内容は、2つのモードで、次のように切り替わります。
モード | レイヤーの描画内容 |
---|---|
Source Image | 塗り分けの元線画ファイルの画像とまったく同じ内容 |
Blank | 画面全体を均一に白( RGB 値 FFFFFF )で塗りつぶしたもの |
この2つのモードの選択は、 JPEG 形式か、PNG 形式で、レイヤーを持たない塗り分け画像ファイルを出力する際は、具体的には元の線画を表示させるかどうかということに関わってきます。
なお、“Background” のチェックを OFF にすると、JPEG 形式の場合は、塗り分けの対象とならなかった箇所が黒( RGB 値 000000 )になり、PNG 形式の場合は、チュートリアル記事で見たように、やり方によって透過部分を作ることができます。
ただ、PSD 形式の場合は “Background” レイヤーを出力することにはあまり意味がないと私は考えています。
というのも、divire の出力する塗り分けファイルは、元線画と同一解像度であるため、Source Image モードの “Background” レイヤーに相当するものは、各種お絵描きソフト上で、元線画ファイルを別途開いてコピーアンドペーストすれば簡単に作れるわけですし、Blank モードならば、新規にレイヤー作成して白で塗りつぶすだけで同様のレイヤーを作成できるわけです。
また、きちんと配慮して絵を描こうとする人の中にはおそらく、オリジナルの線画と、塗り分け専用線画の2枚を別途用意する人もいるのではないかと私は予想しています。
元線画で、絵柄や美的感覚上わざと線を繋がず隙間を開けている箇所(書道で言う「接筆」の配慮をしている箇所)を、divire による画像の塗り分けのためだけに、強いて閉じて囲んでしまった線画は美しくない可能性があるからです。
その場合、塗り分け専用線画を元線画に指定して divire の塗り分けファイルを PSD 形式で出力し、オリジナルの線画を後からコピーアンドペーストするというワークフローを採用するのが、順当な発想だと考えています。
※ Photoshop を使用している方は注意
“Background” レイヤーとは銘打っていますが、divire で作成されるこれは、 Photoshop で扱われる特殊な「背景」レイヤー(透過部分を持たず、消去した部分には背景色があてがわれるレイヤー)ではなく「ただのレイヤー」です。
したがって、このレイヤーで一部分を消去した場合には、透過部分になってしまいます。これを Photoshop 上で「背景」レイヤーとして扱おうとする場合には、「レイヤーから背景へ」のメニューを使用するなどして、レイヤーの変換を行ってください。
まとめ
この記事では、レイヤー構成設定ページを操作して、divire の「塗り分け箇所」=「レイヤー」を決めていく仕組みについて紹介しました。
まあ、 divire を実際に動かして、いろいろ設定を変えて塗り分けファイルを出力していくのが、結局いちばん理解しやすいとは思いますが … 。
次の記事は、本記事でも少し触れた “Periphery” の詳細設定などを含む、 塗り分け処理方式設定ページの解説になります。