Windows で PSD 形式ファイルを扱えるお絵描きソフトまとめ
この記事では、Winsows PC 上で「 PSD 形式」の画像ファイルを読み出し・編集できるソフトを、できる限り多く紹介したいと思います(※ 2020 年 6 月時点、筆者の知る限り)。
無料で利用できるものも多数ありますので、お絵描きソフトを持っていない方は、ぜひ試してみてください。
目次
PSD 形式とは?
PSD 形式は、おおまかに分類するなら、コンピュータ上で画像を扱うファイル形式のひとつ、ということになりますが、web サイトでの画像表示に使われ、一般により広く知られている JPEG 形式や PNG 形式とどこが違うのかというと、そのいちばんの違いは、「レイヤー情報を持っていること」だと言えると思います。
「レイヤー( layer )」とは「層」を意味する英単語です。コンピュータ上で、各種のアプリケーションによって画像制作を行う際には、「レイヤー」を活用した作業が好まれています。
商品の包装など、透明の素材にプリントがしてあるようなものを日常目にする機会は多くあると思いますが、あのように図柄がプリントされた透明なフィルムを何枚も重ねて、ひとつの絵画作品(コラージュ絵画)を形づくることをイメージしてください。フィルムの重ね順を変えたり、位置をずらしたりすることによって、絵画の全体のイメージを大きく調整することができます。ひとつの紙や布のキャンバスに直接色を塗って作業した場合は、なかなか、フィルムを置いたりはがしたりという簡単な仕方で、大胆な調整をすることはできません。
コンピュータ上での画像制作で、上述の例でのひとつひとつの透明なフィルムに相当するものが「レイヤー」です。「レイヤー」は、コンピュータ上のデータになりますので、これらについて、重ね順を変えたり、位置をずらしたりといったことの他、複製したり、半透明にしたり、光の特性を変えるなど、さまざまな高度な操作を柔軟に行うことができます。
何枚もの「レイヤー」を活用して制作している画像データは、「立体的な階層構造」を持っていると言えます。PSD 形式の画像ファイルはレイヤー情報を保持しているので、この「立体的な階層構造」を維持したままデータをやりとりすることができます。
このような「立体的」特性を持つ PSD 形式のデータと比較して、JPEG 形式や PNG 形式ファイルの画像データは「平ら・平面的( flat )」なデータであると形容されます。上に述べた、ひとつの紙や布のキャンバスに直接色を塗ってしまったときのように、あとから調整することが難しいのです。
その点、レイヤー情報を持つ PSD 形式の画像データは「作業中」のデータであり「これから先の調整を見越している」という性格があります。じっくりと時間をかけて画像制作を行う場合には、作業の途中状態を PSD 形式のファイルに保存しておく方が有利であることが想像できると思います。
PSD 形式は、コンピュータ上で画像制作を行うためソフトウェアとしては、最古参に属する Adobe Photoshop (アドビシステムズ)で用いられた形式であったために、今日では、アドビシステムズ以外のメーカーやフリー開発者の制作した画像制作ソフトでも、 PSD 形式を扱うことのできるものが数多く存在しています。
ただし大前提として、PSD 形式の情報をすべて利用できるのはやはり Photoshop だけ
PSD 形式のデータが、もし「ただ制作中画像のレイヤー構造についての情報を持っているだけ」であれば、画像データファイルのいわば「共通規格」たり得て、アドビ以外のメーカーやフリーのソフトでもその情報をすべて読み出せそうなものですが、実際はそうなっていません。
PSD 形式のデータには、「Photoshop の作業としてできることの情報は、なんでもかんでも保持する」性格があります。
画像にテキストを配置するための情報などはまだ他のソフトでも活用できそうですが、Photoshop でアニメーション GIF を作成するときに用いる「タイムライン」という特殊なインターフェイスの持つ情報なども、しっかり PSD 形式画像ファイルの中に記録されるので、結果、 PSD 形式ファイルの情報をすべて活用できるのは、「保有する機能種別数において Photoshop と同等または完全上位互換になるソフトウェア」だけということになります。
「保有する機能種別数において Photoshop と同等または完全上位互換になるソフトウェア」などというものは、「ない」ので、やはり「 PSD 形式の情報をすべて活用できるのは Photoshop だけ」という大前提を想定しておく必要があります。
本記事のタイトルは「Windows で PSD 形式ファイルを扱えるお絵描きソフトまとめ」ですが、アドビ以外のメーカーやフリーのソフトが、PSD 形式を「扱える」程度は当然、幾分か限られたものになります。
この記事では以下、PSD 形式を「扱える」という評価の判断として、最低限、上述した「画像のレイヤー構造の情報を読み出し、編集し、保存することができる」ことを基準として話を進めます。
Windows で PSD 形式ファイルを扱えるお絵描きソフト列挙
上に説明したように、PSD 形式ファイルの情報をすべて読み出せるのは Photoshop だけですので、以下、 PSD 形式ファイルから「画像のレイヤー構造の情報を読み出し、編集し、保存することができる」という観点から、PSD 形式に「対応している」お絵描きソフトを紹介していきます。
「お絵描きソフト」と書きましたが、以下に紹介するソフトウェアの中には、世間的には画像編集(レタッチ)のジャンルに含められているものをいくつかあります。もっとも、 Photoshop がその製品名の通り、おおもとは写真編集ソフトウェアだったのが、多くのクリエイターの作品制作に活用されて、現在ではお絵描きソフトの一角とみなされている節もありますし、画像編集(レタッチ)の機能を最低限備えていれば、十分「お絵描きソフト」たり得るものとさせてください。
個々のソフトウェアについて、ここが優れているとか、ここが物足りないなどの評価については、使う人個人の好みによって分かれてしまう部分もあるので、本記事では省略します。また、ソフトウェアの価格についての情報も、いつ変わるかわからないものですので割愛させていただきます。入手するため公式サイトへのリンク先だけは記載しましたので、各ソフトウェアの価格は公式サイトにてご確認ください。
本記事では、各ソフトウェア実行時のスクリーンショットを用意しました。
いずれのスクリーンショットもディスプレイの解像度が Full HD = 1920×1080 でソフトウェアをフルスクリーンした状態をキャプチャしたもので、かつ、同一の PSD 形式画像ファイルを開いているときのものです。
なお、スクリーンショットの撮像時に用いた PSD 形式画像ファイルは、拙作・線画塗り分けレイヤー自動作成ツール “divire” (詳しくはこちら)で作成しました。divire は JPEG 形式や PNG 形式の「線画」から簡単にレイヤーを持った PSD 形式のファイルを出力することのできるツールで、無料で使用できるものですので、興味ある方はチェックしてみてください。
それでは以下、2020 年現在、Windows で PSD 形式ファイルを「扱える」お絵描きソフトを、
- 有償のもの
- 無料で利用できるもの
- 無料で利用できるブラウザサービス
の順に列挙していきます。
有償のもの
Adobe Photoshop
Adobe Photoshop →
公式サイト
CLIP STUDIO PAINT
CLIP STUDIO PAINT → 公式サイト
Affinity Photo
Affinity Photo → 公式サイト
Corel PaintShop Pro
Corel PaintShop Pro → 公式サイト
Corel Painter 2021
Corel Painter 2021 → 公式サイト
ペイントツール SAI
ペイントツール SAI → 公式サイト
ペイントソフト openCanvas
ペイントソフト openCanvas(オープンキャンバス) → 公式サイト
Paintstorm Studio
Paintstorm Studio → 公式サイト
無料で利用できるもの
MediBangPaint Pro
MediBangPaint Pro → 公式サイト
Fire Alpaca
Fire Alpaca → 公式サイト
Krita
Krita → 公式サイト
GIMP
GIMP → 公式サイト
無料で利用できるブラウザサービス
Pixlr
Pixlr → 公式サイト
Photopea
Photopea → 公式サイト
まとめ
この記事では、Winsows PC 上で PSD 形式を扱うことのできるソフトウェアを紹介しました。
おどろく程たくさんの選択肢があるので、「 PSD 形式の画像ファイルを開きたい!」という程度の目的であれば、インスピレーションで選んでしまうのが良いと思います。ブラウザ上のサービスであれば、PC にソフトを導入するまでもなく、ブラウザ上で完結することもできますしね。